少し前ですが、The Skating Lessonというサイトにフランク・キャロルコーチのインタビュービデオが掲載されました。このサイトは女子シングル元アメリカ代表選手のジェニファー・カークと自らもスケートをするブロガーのデイブ・リースにより運営され、いろいろなスケート関係者へのインタビューなどを行っています。ジェニファーはかつてエヴァンのリンクメイトであり、ガールフレンドであったことも知られています。
キャロルコーチのインタビューは3月終わりごろに行われたものと思われます。
なかなか興味深い内容なので、エヴァンについて話している部分をご紹介します。わからないところをアメリカ人のファンの方に確認中なのですが、あまり遅くなっても情報としての価値がなくなってしまいますので、不完全なところもありますが投稿させていただきます。あとで訂正するかもしれません。(私は聞き取りが得意ではありませんので、逐語訳というわけではありません。大体こんな感じという程度に読んでいただければと思います。間違っているところもあるかもしれませんので、訂正、補足などありましたらよろしくお願いいたします。)
Part1
Part2
エヴァンについての話は主にパート2の52分過ぎごろから約9分半にわたって続いています。
(発言者:J=ジェニファー、D=デイブ、F=フランク)
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52:07 (ここからエヴァンについてメインに話しています。)
J:エヴァンはあなたの生徒の中で初めてオリンピック金メダリストになったが、彼より肉体的に恵まれている選手も多い中で、彼が五輪チャンピオンになれたのは他の選手とどこが違うのからなのか?
F:一言で言って「情熱」である。彼は私が教えた誰よりも情熱的に物事に取り組む。強い意志で身も心も打ち込んでやりとげる。肉体的には誰かがボーイング747のようだといったような長い腕や鶴のような脚で、あのように長身だと簡単に絡まってしまう。彼は空中姿勢、足の位置やコントロールの感覚、ジャンプのチェックのタイミングで腕を中心にいかにたたむかなどものすごく努力して、よくできるようになった。
D:あなたの生徒のほとんどは整った腕の動かし方をするが、彼はステップシークエンスの時にとても大きく腕を振り回す。他の生徒には見られないことだが、抑えようと話したことは?
F:スケートは変わったのだ。フリープログラムでは、実はやることの多くが決められていてフリーではない。フットワークでは腕、頭、足の裏などすべてを動かすことが求められ、ウィンドミルのような動きをしなければならない。要求事項なのだ。ダンシング・ウィズ・ザ・スターズはエヴァンにとって大いに役だったと思う。いまでは音楽の解釈という面で素晴らしくなった。要求されるものが変わったので、かつての生徒とはフットワークが違って見えるのだ。たぶん別のシステムで育まれたものであろう。
J:残念ながら彼はスポーツヘルニアで今シーズン休んでしまった。私は彼と2年ほど一緒に練習したが、間違いなく私が見た中でもっとも練習熱心な選手で、プログラムの中でトリプルアクセルを何度も何度も繰り返したり、マゾヒズムの境界線を超えているのではと思うほどだったが、練習のし過ぎによるけがをしてきたことも知っている。彼が練習しすぎだと思った時に、リラックスしたほうが良いと言い聞かせることはどのぐらいの頻度であるか?
F:確かに彼はやりすぎる傾向がある。もう十分だといったことは何回もある。今日はフリーを6回もやったのだからどんな人間にとっても十分だよ、怪我をするよと言う。後になってわかったのだが、もう十分やったから切り上げようということだったのに、どこかほかのリンクに行ってもう一セッションしたのだと言ってきたので笑ってしまった。そんなふうに彼はマニアックだ。何というかマニアックというのか。
J:彼をよく表す言葉だ。
F:彼はたくさんやればやるほどよいと思っている。でも今のところはとても気を付けなければならない。深刻な手術からの回復期にあるのだから。ミッシェルが復帰したときのように注意深くしなければならない。彼は医者の言うことを聞いているし、必要な注意はしている。
J:現在の状況は?
F:とてもよくやっている。すべてのポジションを柔軟で楽にできるというところまでは言っていない。ポジションを取ることはできるのだが、痛みを伴う。回復のトレーニングをして楽にすべてのポジションをとれるようにもっと体をほぐさなければならない。今できつつあるところだ。それから、彼はアクセルを除くすべてのトリプルをやっている。アクセルは今までのところダブルアクセルはできる。トリプルアクセルは、靴とブレードを合わせてスケート靴を正しく調整するまで、今ちょっと控えている。ジェニファー、君もよく知っているように、トリプルアクセルをやる前には靴をちゃんとしておかなければならない。今それに取り組んでいるところだ。
J:あなた方の関係はどうですか?彼は今やオリンピックチャンピオンだが、習い始めたころと同じようにあなたの言うことを聞くのか?
F:エヴァンは私に対して全く変わらない。私も彼に対しては同じだ。私は何も遠慮しないし、私は彼を1スケーターとして見るだけで、オリンピック金メダルを目指しているとか金メダリストだとかいう風には考えない。彼はいつでも私に対してものすごく敬意を払ってくれるし、とても優しくて、いつも優しいことを言ってくれてきたし、私たちの関係はとても良いものだと思う。真の尊敬の上に成り立っている。
D:エヴァンはラスベガスに家を持って、また時にはロサンゼルスのヴェラ・ワンのところにも住んでアルテシアのクワンのリンクでも練習している。現在あなたのパームスプリングスのリンクでは実際どのぐらいの頻度で彼をコーチしているのか?
F:以前ほどたくさんは見ていない。オリンピックに向けてトレーニング拠点をどうしようか決めなければと今考えているところだが、今私にはデニスがいて、エヴァンがいて、世界のトップスケーターの二人がいる。両方とも金メダルの可能性を持っている。それで彼らを一緒にして、どのような練習環境が理想的か考えている。私は先週エヴァンを月曜と火曜の2回見て、良い時間を共に過ごした。その時はレイク・アローヘッドだった。ここに来るには車で長時間かかるが、レイク・アローヘッドならLAにもパームスプリングスにも近い。ここは遠いのだが、私は基本的には半ば隠居しようと決めていたので、自分の家に戻って、ここでレッスンを楽しみたいと思っていた。でも今エヴァンが競技すると決めたし、世界選手権で2位になった子もいるし、私のキャリアは再び表に出てきた。だから今は適応しなければならない。もっと多くの時間を共にするにはどうすればよいか考える。
D:現在四回転が男子では非常に重要な要素だが、エヴァンはこの要素の練習で足の疲労骨折に苦しみ、また試合ではいつも回りきることに苦労していた。今日の上位選手が戦うのに必要な2本の4回転を彼が試合で回りきって降りることが可能だと思うか?
F:私は実際には彼に2つの四回転が必要だとは思わない。1つの四回転をきれいに決めることが必要だ。Youtubeかどこかで見られるかもしれないが彼は素晴らしいクワドをやっていた。昨夏、彼は何度もきれいにクワドを降りていた。サンバレーでたくさんの人が気が付いて、人々がiphoneを持ってリンクに来た。(このあと人々が撮影する様子について話しているようですが、よくわかりません。)そこではエヴァンはたくさんやっていたのは確かだ。去年の夏やスケートアメリカの試合が近づいたときに深刻なけがをする前は、彼はきれいにクワドを降りていた。このシーズン彼はひどいけがをしたが、彼はまたYoutubeで見られたようにきれいにできるようになると期待している。それに忘れてはならないのは、今年の世界選手権のフリーで勝った子は1つのクワドをきれいにやり、2つのトリプルアクセルをきれいにやり、プログラムのほとんどすべてをきれいにやった。だから今は1つでいい。(ここで出てくるYoutubeのビデオはおそらく関係者のみが知っているものだと思われます。)
D:エヴァンがカムバックしても世界の舞台でパトリック・チャンに勝てないかもしれないことが明らかになるのではと思わないか?
F:エヴァンはトライするためにカムバックするのだと思う。アスリートには競争相手が必要だ。アスリートスポーツとはそういうものだ。スポーツは勝つことを期待するものではない。スポーツとは向かっていくこと。スポーツマンとは何かという定義とは、すべての正しいモラル、誠実さ、人格と共に競技をするということ。それらのすべてを彼は持っている。彼は彼のできるベストを尽くして戦いたいと思っている。結果については我々にはコントロールすることはできない。長年見てきたとおり何もできない。
D:それについてお聞きしたのは、多くのスポーツにおいて選手がカムバックするときに、彼らが3年、4年前にやっていたことに対して、特に休んだ後だと、怖がる感覚が出てくる。それで聞いてみた。
F:もし怖いという気持ちがあるならやるべきではない。そのスポーツをやめるべきだ。
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エヴァンについての部分は以上です。
このほか、一般的な話題や他のスケーターについての話の中でところどころに名前が出てきます。
Part1
18:50
(ジャンプテクニックの話の中で)ライサチェックは良いループを飛ぶとのこと
27:15
それぞれの生徒を違ったカテゴリーで評価しているとの話の中で名前が出る。
28:40
D:大きな試合で優勝した選手がその後負けてしまうことにはフラストレーションがあると思うが、もう一度トップに立つためにどのようにモチベーションを与えるのか?
F:エヴァンが復帰するにあったってはすべて忘れろと言った。金メダルは箱に入れて鍵をかけろ。世界チャンピオンが復帰するのは有利だと思われるかもしれないが、そうではない。ジャッジはよりミスに厳しくなる。
Part2
34:53
(スター選手になったらの賞金などの一定割合をコーチに支払うという契約について。)
エヴァン・ライサチェックとは契約を結んでいる。あるとき(母親の)タニヤ・ライサチェックが「いつから支払い始めなければならなかったのでしたっけ?」と聞いてきたので、「昨日支払っていただいたのですよ。世界選手権の代表になったので」と答えた。
(補足:キャロル氏は5%をもらっている。多額だとは思わないが、自分にとっては練習方針を考えたり、振付師と音楽を聴いたり、衣装について考える程度なので。ロシアではコーチがエージェントのようなこともするので60%ぐらいのこともある。クワンは日ごろからとても気前よく報酬を払ってくれていたので、そのような契約はしていなかった。デニス・テンとは契約を結んでいない。なぜならそんなに稼げるようになると期待していなかったから。)
48:57
ティム・ゲーブがエヴァンに押し出されたというような発言をしたことについて。
2人のトップスケーターを受け持つことにどのように対処したか。
まず第一に、エヴァンが来たときは、まだ全米7、8位ぐらいで大した選手ではなかった。エヴァンにはあくまでティム・ゲーブルが優先で練習時間も待たなければならないと説明した。運よく彼は週2回レッスンを受けられたし、彼にもっと時間をさけるようになるまでは他の人たちと練習していて、私にはあくまでティムが優先だった。それはエヴァンが来るずっと前から事前に決まっていたことだし、実際エヴァンには私を不幸にしたりティムと私の関係をぎくしゃくさせなければならない理由なんて何もなかった。いずれにせよ、それは全くティムと私の個人的なことだった。エヴァンが頭角を現したのはずっと後、2005年に世界選手権で銅メダリストになった時で、その前に私はティムとは別れていた。
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他の部分はざっと聞いただけですが、全体を通して、どの生徒に対しても思いやりを感じる話しぶりであるとの印象を受けました。
エヴァンについても師弟の強い信頼関係がうかがわれることに感銘を受け、今後がさらに楽しみになったと感じました。インタビューの中で出てくる「先週エヴァンを見た」というのはおそらく3月18、19日ごろのことではないかと思われます。それからかなり日数がたっていますし、ローズさまに訳していただいた記事にあるように4月としては通常の状態にあるということであれば、さらによい状態にあるはずだと思います。前の記事でご紹介いただいた衣装についての説明から考えると、少なくとも一つのプログラムは持越しになるのでしょうか。最近の本人のつぶやきからも練習に打ち込んでいる様子がうかがえますので、来シーズンの活躍に期待したいとですね。
1 件のコメント:
casaverdeさま:
記事の更新&聞き取りと翻訳をありがとうございました!!あの長い長いインタビューを、これほど丁寧に書起して下さって本当に助かります。有り難く読ませていただきました!
全体的にエヴァンとフランクコーチの信頼関係がわかる秀逸なインタビューでしたね。近況や練習環境、また再び五輪を目指す上でのお話など、とても有益な情報になるほどと思いました。前回、来季採用されるかもしれない衣装が残念だと書いてしまいましたが、競技復帰そのものについてはとても期待できそうな感じがします。
本当にありがとうございました!!!!私も更新がんばります!!
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