2009年4月17日金曜日

09国別対抗戦

(注:この記事は2009年6月24日に書いています)

国別対抗戦のライサチェック雑感を
生観戦から二ヶ月経ってようやく綴ります。
試合の合間の面白エピソードなどはその当時に書いたので
今回は主に試合の内容とそれに関する感想だけを追います。


<SP:ボレロ>

生観戦の良さは会場の空気そのものを感じることができる点、
そしてリアルタイムで選手のパフォーマンスを見届けることができること、
そういったところにメリットがあると思う。
もちろんテレビで放送されない場面を見られることも含めて。

ただし、デメリットも無くは無い。
前の座席では近すぎて選手が視界から消えたり、
遠くで行われた技は精度を見極めるのが困難だ。
そして会場の雰囲気に呑まれてしまう。
それが良い雰囲気であれば上記のように大きなメリットにもなるけど
悪い雰囲気であると、本来落ち着いて見られるはずのものも
そうでなくなってしまう。
今回のSPが自分にとってまさにそれだった。

先の大まかな感想にも書いたけれど、第ニグループの六分間練習は
あまり見ていて安心できるようなものではなかった。
特にライサやパトちゃんという、先日のワールドで良い結果だった人が
あまり本調子でなさそうな様子を見せると不安になる。
そして、ライサの出場順は第2グループの5人目。
それまでの流れは、何とも心臓に悪いというか
「やっぱりみんな本調子じゃないのかな」ということを印象付けるという
何とも見ていて苦しい展開が続いた。

ノブナリンの点数が思ったより出なかった、
タカヒコヅカとパトちゃん、アボット君が不調。
それだけでなく、第一グループの選手たちより
低い点数さえ出ていたのだから驚きだ。
当然、会場には「今日はダメだこりゃ」オーラが漂う。
そしてパトちゃんの出番終了後に出てきたライサは
アクセルに何度かトライするものの、クリーンに決まらず。
果たしてこの空気の中、彼はうまくやれるのだろうかと心配した。

音楽が始まると、リズムに乗りながらも慎重な様子が見てとれた。
彼が緊張している。よって、必然的に私も緊張してしまう。
だから最初のアクセルが練習とは違い、クリーンに決まったときは
心底安心したし、会場からも大きな拍手が上がった。
そして自分の座席の近くでコンビネーションも決まり、
あのどんよりしていた会場の空気がガラリと変わっていた。
フリップを跳ぶ頃には確実に大丈夫だろう、という
いつもの安定感を感じた。そしてその通りだった。
それから彼も少し緊張から解き放たれたようで、
サーキュラーステップにはいつもより優美さを感じたし
スピードも徐々に上がっていった。
スピンもいつも通り危なげなく、音楽のタイミングにも合わせ、
いつも通りの彼が戻ってきたように思えた。

個人的に中盤のサーキュラー以降で、ようやく彼の演技を
楽しめるくらいに自分が落ち着いたように思う。
最後のストレートラインステップの頃には
完全に会場が彼の空気になっていたし、躍動感を感じることもできたし、
それまでのガッカリな空気を覆す、良いパフォーマンスだった。
本当に、あの空気を覆したという点で彼のファンでなくとも
自然にスタンディングオベーションをしてしまう、そういう演技だった。

もっともテレビ放送ではそういうものは伝わらないので
私も放送を見ただけだったら「ワールドのときの方が
勢いがあってよかったかも。やっぱり今回は疲れてるのかな」
という程度の感想しか出なかっただろう。
その点できちんと生観戦したというのは良かった。

後から冷静になって放送を見ると、確かにワールドのときほどの
勢いや迫力には、欠けていたかもしれない。
ただプログラムの完成度はすでにピークに達しているので
その点では音楽とズレたとか、合ってないとか、
振り付けが微妙とか、そういう感想は全くなく、
パフォーマンスとしては良いものだったと思う。
それに、このプログラムは生で見た方が音楽との調和を
より感じられていいなと思った。
「ボレロ」という音楽はそもそもが表現するのが難しく、
うまくやらないと大体がゴージャスな音楽と複雑なリズムに
置いていかれてしまうものだけど、
ライサは最終的には音楽の持つ華やかさと躍動感を
うまく自分のものにできたな、というのを間近に見て
感じ取ることができた。これは嬉しかった。


<フリー:ラプソディ・イン・ブルー>

フリーの最終滑走がジュベたん、その直前にライサという
ワールドの再現かこれは!?と思わせる滑走順に
「もしかしたら今回も彼は一番になれるのかもしれない」と
淡い期待を寄せていたワタシ。

ファンとして一番になることを全く期待してなかったわけじゃないけど
国別対抗戦に集まった男子選手は、誰もが今シーズンで活躍し、
注目を浴びた人がこれでもかというくらい揃ってしまった。
そしてライサは疲労骨折で体調が万全というわけではないし
今回もクワドはやらないとわかっていたので
その状態なら彼以上にうまくやった人に抜かれても
仕方が無いだろうなという気持ちがあったのだ。
それでもエキシビジョンに出場できるくらいの順位には
多分なれるだろうとは思っていたけれど・・・

6分間練習を見ても、彼が万全のようにはあまり見えなかったし
やはり緊張しているようだった。
それでも昨日はあんなに良いパフォーマンスをしてくれたのだから
きっと今日も酷いパフォーマンスはしないだろうと思い、
前日よりは落ち着いた気持ちで見ることができたけど。

前半グループで、ワールド2位だったパトちゃんは
アクセルに失敗したものの、少し持ち直した演技を見せていた。
タカヒコヅカは最後まで噛みあわなかった印象を与えたのとは
対照的だった。しかし二人の間には結構な得点差が出てしまい、
ジュベたんもライサも、少なくとも普段出しているような
点数を出さないとパトちゃんに抜かれてしまうかもしれないと思わせた。
前半にパトちゃんが演技を終えていて、彼を抜くには
あと何点必要で、そのためにはどの要素を失敗しなければ大丈夫なのかとか、
そういうことをどうしても考えてしまう。
何せ、ライサにはトリプルアクセルのダウングレードという
恐ろしい減点の可能性があるのだから。
そしてSPで80点こそ越えなかったものの、
逆転の可能性が大いにあるノブナリンの存在も怖い。
私はいくら贔屓のライサが勝てそうだからといって
他の選手に転んで欲しいということは一切思わないし
誰が勝っても、それに値するパフォーマンスであれば
当たり前に祝福する準備はできていたから、
ただライサはいつも通りやれればそれでいいと思っていた。
しかし、彼がその後に見せたパフォーマンスは
それ以上のものだった。

フリーに関して言うと、前日とは違って
ワールドよりは緊張していないように見えた。
直前に滑ったノブナリンもなかなかの好演技だったので
会場の空気も昨日ほど張り詰めていなかったのもあるかもしれない。
「ラプソディー・イン・ブルー」の曲の出だしの、
あの緩やかで楽しげな感じが、その場の雰囲気にピッタリだった。
その時点で自分の個人的な緊張は解け始めていたように思う。
最初のコンビネーションジャンプが決まった時点で、
すでに「彼はもう大丈夫だ」と確信が持てた。
もっとも、アクセルの前はほんの少しナーバスになったけど
最初のアクセルが決まった以降は、ほぼ安心して見ていた。
そして思った、「彼はまた一番になれるかもしれない」と。

気まぐれに変化する音楽の雰囲気に
彼はすっかり変幻自在となって合わせていくし
シーズン当初に感じたような必死さはもはや感じられない。
むしろ余裕さえも見出すことができた。
凝り固まった緊張から解き放たれたように、
軽々とジャンプをし、ステップを刻み、スピンを回る彼を見て、
誰もこの流れを止めることはできないだろうと思ったくらいだ。
映像だけではわかりづらいが、このプログラムは
曲の流れに完全に調和したとき、全体のパッケージとして
非常にまとまりがあって、観客の集中力を切らさない良作だ。

二度目のアクセルはダウングレード判定だったのだが
その場ではわからず(遠かったんだなこれが)
その後も全部ジャンプを降りて、もはや彼は楽しげだった。
最後のスピンが終わった後にほんの少し時間があまって
フィニッシュのポーズを取る時に少し遊んでみせる茶目っ気も見せた。
「彼はまたうまくやった! しかも今度は目の前で!
ウッヒョイウッヒョイ!!」という気持ちで胸いっぱいになった私は
嬉しそうで楽しそうな彼と、彼の演技を心から楽しんだ観客の姿を見て
それだけで幸せだった。来て良かったと思った。


生観戦ということで、ライサの出来が良かったからといって
結果がどうなるかはその時点では無論わからず
ただ、その時点で1位になって「ああ良かった」と
ほっとしたのを覚えている。
残すはジュベールのみで、別に彼に負けても
悔しいと思うことはないだろうなと思った。

ジュベたんはワールドのときよりは、そこそこ上手くやった。
クワドも決めたし、3-3も二度やり、アクセルも二度決めた。
これだけ書くと彼が優勝しても良さそうなものだけど
全体的な精度は、観客として見てもちょっと荒が目立ち、
もったいないなと思わせる部分が多かった。
あとはシーズン前半ではあれだけ難度を上げていて
レベルをとっていたスピンが、ワールドのときと同じく
レベルを取りこぼし、荒さが際立っていたのに驚いた。
この出来ならば僅差とは言えライサが上にいっても
仕方が無いのかな、という気はしたけど
ジャンプの難度の高さと成功率から見て、
やはりライサにとっても怖い存在であるのに変わりは無い。
ライサもジュベたんの演技を見入っていたのが印象的だった。

この試合を通して、改めてライサは総合力というか
安定性で勝負するタイプだなと実感したけど
クワドに挑戦した選手が多かったことや、
アクセルのダウングレードなど、
そういった今後の彼の課題も目の当たりにした。
最終的にこの試合で男子の一番になったとはいえ
持ち前の安定性と華やかさに加えて、もう一つ技術的な
強みというか得点源、すなわち「武器」といえるものがあれば
ファンとしてもっと安心して見られるのに!と思う。
スピンで安定してレベル4が取れたり、
ステップも大体加点つきレベル3を取れるとはいえ
それほど見た目にも技術的にも突出したものじゃないだけに
インパクトという点では弱いのかな、と。
だけどパッケージとしてはすでに完成された雰囲気を持っているわけで
そういった表現面での強みを試合の生観戦で感じられたのは
個人的な収穫でありました。


それにしても、今だからようやく落ち着いて映像も見られるし
感想も書けるけれど、当時は落ち着くことも冷静になることも
全然できなくて酷かったですね(苦笑)
生観戦だと気持ちが入ってしまうからどうしてもね・・・。

しかし、この試合のチケットを獲ったのは前年の冬頃で
まさにライサがファイナルにも出場ならずでガッカリだった時期。
その中で試合の全日程のチケットを獲った自分には
あえてグッジョブといいたい。
そもそもライサが来るかどうかだってわからなかったし
「もし来たらラッキー!」程度に思っていたのが、
ワールドチャンプという称号を引っさげて来ただけでなく
目の前で試合に勝ち、チームを優勝に導くという
ものすごい偉業をやってのけてくれたのだから。
前年の冬の時点でそうなることなど夢にも思ってなかったけど
「この試合は全日程観戦すべきだ」という直感が働いたことには
我ながらビックリしてしまう。単純に偶然ではあるのですが。
おかげで観戦にかかったコストは今までの比じゃないけど
ライサがこれだけうまくやってくれたのだから
そんなことも気にならないし、それだけの価値はあったと思う。

それに、私はせっかく彼がワールドチャンプになったその瞬間、
ロスには行けず、試合もリアルタイムで見ることが叶わず、
ただ結果を報告してもらうのを待つ身だった。

だからこそワールド三週間後という日程で来日してくれたことも
ワールドと同じ結果、遜色ない演技を見せてくれたことも
本当に嬉しかったのだ。
インタビューで「ワールドでロスに来れなかった
日本のファンの皆さんのためにも、いい演技がしたかった」と
言ってくれたことも含めて。


そういうわけで、予想外にこの試合は自分にとって
ハッピーなものとなり、ライサもシーズンの締めくくりに
良い結果を出すことができてホントによかったね!という
実に「めでたしめでたし」な結末を迎えたのだった。


あー、こうして書くと・・・私ってホントに幸せなファンだわ!(笑)

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