2009年8月10日月曜日

リスト「ラ・カンパネラ」

週末に休みなのをいいことにダラダラと「名曲探偵アマデウス」の
再放送を見ていたら、意外と面白かったのでその感想も兼ねて。


扱われていたのはリストの「ラ・カンパネラ」
鈴木明子さんの昨季SPとして記憶に新しい曲です。
手がライサイズだったと言われているリストの曲らしく
さりげない超絶技巧が施された、あまりに有名な曲。


この放送のドラマ部分ではスポーツの実況でしゃべりすぎて
うざがられているアナウンサーが登場するんですが
これも微妙にフィギュアスケート放送が抱える現状と
マッチしていて笑えた。

「肝心なのは何が主役かということです。
観客は実況によって感動するのではありません」

全くその通りです(苦笑)。いいとこ突いてきます。
某民放のあの人とかこの人とかにぜひ見て欲しいですね。
むしろ見ろ。←何様じゃ


で、曲の話に戻ります。
この放送を見るまで、「ラ・カンパネラ」の完成に
長い年月がかけられたことだとか、第三稿でようやく完成したとか
全然知らなかったんですよ。
元々はパガニーニのメロディーから作られたというこの曲。
第一稿だと演奏時間が17分にも及ぶというから驚きだ。
第二稿では有名な冒頭の部分が付け加えられ、大幅に曲が短縮され、
全体的に細々とした超絶技巧が繰り返される。
そして第三稿では調を変え、絶えずレ#の音を響かせるという構成に。
このプロセスが非常に興味深かったです。

ピアニストの小山実千恵さんが演奏と解説もしていました。
彼女が「調が変わって、ミ♭だったのがレ#になったことで
リストの鐘の音に対する強い気持ちを感じる」と話していたけれど
それに思わずうんうん、と頷いてしまった。
ミ♭もレ#も同じ鍵盤なのに、調によっては聞こえ方が全然違うものだ。

絶対音感を所有していると、ちゃんと音名を勉強していないと
黒鍵の音の聞こえ方がド#だったりレ♭だったりで結構紛らわしい。
ピアノを弾くときは、その楽譜の音の位置で判断して
頭の中でそれに従って歌えばいいのだけど
ふと耳に入ったメロディーで「これ良いな」と思ったときに
調を無視した状態で記憶されてしまって
後で楽譜に起こすときにちょっと面倒だったりする。
(そういう場合、普通にド#とレ♭が同時に出てきたりする)

でも曲の雰囲気で#なのか♭なのか判断できる場合がある。
この「ラ・カンパネラ」もそういう類で、
ラフマニノフの「鐘の前奏曲」もそうだったけど
「鐘」という名と音を思い浮かべると、
確かに♭というよりは#だな、と。
あの荘厳な感じは#で表現するのがいいなあと思う。
そのくらい#には音を鋭く聞かせるというか、
何かこう、ピリっとさせる力があるような気がする。
♭は逆に、少しまろやかで、甘く切ない感じ。
そういえばショパンの曲は♭だらけなような。
(↑勝手な思い込みかもしれませんが)


さて、ピアノを弾く方であれば「ラ・カンパネラ」は難曲で
聴くのは良いけど弾くのはちょっと、という人が多いと思う。
私も妹に昔「弾いてよ」と言われたけど断った(笑)
やはり手が大きくないとオクターブの移動がしんどいのと
一筋縄ではいかない曲の解釈の難しさもあって
プロの演奏家でもよほど腕の立つ人じゃないと
演奏会のプログラムに入れない曲なんだそうだ。
言ってしまえばボロが出やすい曲。
素敵な曲だから好んで弾く人もいるし、弾くだけなら自由だけど
お客さんの前で披露するとなると結構な勇気がいると思う。
それでもチャレンジする甲斐はあると思うので
手の大きさでさほど不自由しない人はぜひやってみて欲しい。

リストはこの曲をもって天才演奏家から作曲家へと転身したけど
その理由は「自分の演奏家としての栄光と名誉は一時だけの
ものにすぎないけれど、偉大な作曲家であれば後世に
名前を残すことができる」と考えたからだそうだ。

これってフィギュアスケーターにも通じるものがありますよね。
現役で高度な技を繰り出すことができるのは人生のほんの一瞬にすぎない。
だけど振り付けとか自分の経験に基づく指導は、
後の世代に伝えて残していくことができる。
今のスケーター達にもそうやって代々受け継がれてきてるんですよね。


そういうわけで、リストにとって転機となった「ラ・カンパネラ」。
鐘の音への厳かな想い、自分の将来への決意、
そういったところを感じながら鈴木明子さんのプログラムを
再度見てみるのも楽しいかもしれません。
お時間がある方はぜひ。あと繰り返し鳴っている「レ#」の音も
ぜひ感じてくださいね。

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