2010年2月2日火曜日

オリンピックの女神は誰が勝つドラマを選ぶか?

昨年、ワールド前に私はこのブログに

ライサの出来や成績がどうなるかはおいといて、
今年チャンピオンになる男子選手はちょっと気の毒な感じがする。
まず、有力選手が引退したり出場できなかったりという状態なので
「あの人がいないから勝てたんだ」ってことは絶対言われるでしょ。
それと「今回優勝したらオリンピックの優勝はないね、
だってそういうジンクスだもんね」とも言われるでしょ(苦笑)。
あとチャンピオンとしてのプライドと重圧を持って
オリンピックシーズンに挑まないといけないでしょ。
そしてオリンピックでも勝てなければ、
来年に「とんだ期待外れ」とかバッシングされるでしょ。
こんな損な役回りとして勝利の女神に指名されちゃう、
可哀相な選手は一体誰なのか、だんだん心配になってきた。
ライサイドブログ上の法則だったら、
こんな一見素晴らしいようで実は損な役回りが当たる人って
ほぼ決まったようなものじゃないですか(笑)
・・・などと書いて、ライサのワールド優勝フラグを
微妙に仄めかしていた前科があります。

上記のようなことを事前に思った理由は
昨年、「仮に私がフィギュアスケートの女神だったら
贔屓目を抜きにして、誰の勝利を選ぶか」を考えたわけですよ。
誰が勝つ脚本なら面白いだろうか、と。
一応、仕事でスクリプト書いてる身ですから
そこは客観的にどんな筋書きが面白いか、
私が書き手なら誰を選ぶかを真剣に考えたんです。
で、先述しているように「今季勝っても全然美味しくないし
こりゃライサが当たるかもな・・・(笑)」と思っていて
蓋を開けたら本当にそうなったので、
やはり客観的にプロットとして面白いものを持つ選手こそ
ここ一番で選ばれるものなんだなとか思ったわけです。


じゃあ今季は誰だろうか?
・・・そういうわけでカオス極まる男子シングルの
有力候補達で、「誰のドラマなら面白いか」を
ちょっと考えてみようと思います。


①プルさんの「宇宙人、地球に帰る編」
私が書き手で、それぞれのキャラクターに愛着を持ちすぎて、
「もうこの子たちの誰も不幸にしたくない・・・!」と思ったら
この人の勝利に逃げますね(笑)だって楽だもん。
「結局、宇宙人は宇宙人。誰も勝てない」っていうオチなら
説明が簡単につきそうな気がする。
宇宙人のカムバックというプロットも大味とはいえドラマチック。
ただ、その前に少しこれまでのあらすじと称して
プルさんの4年間を振り返る必要がありますが
それはロシアか宇宙のテレビ局がやってくれることでしょう。

②パトちゃんの「カナダを背負う若きエース編」
彼を主役にすると、日本の中継でありがちな「日本VS世界」が
そのまま「カナダVS世界」になるだけという、
わりとわかりやすい王道ドラマが生まれます。
まして彼の場合は大技を持たない、オリンピックチャンプに
なるには新しいタイプということもあり
「大技を持たないパトリックは、世界の強豪とどう戦う?」という
わかりやすい難題がすぐに生まれます。
唯一、不利なのはオリンピックが自国開催ということ。
選手としてはそれは有利でドラマチックだけど、
物語としてはそれでは面白くない。
物語には主人公を最大の逆境に立たせることに
書く側の面白みがあり、読み手もそれに惹かれていくもの。
彼が勝つ物語は、読み手からの「作者の出来レースかよ」という
ツッコミを覚悟しなければなりませんね。

③ダイスケの「悲運の怪我を乗り越えて編」
途中の悲劇的なストーリーをあげるとすれば彼とステ様でしょう。
恩師との衝突と別れ、選手としてピークの時期の大けが、
手術の決断と長いリハビリ、久しぶりの試合、
まだ若干不安を抱えてのオリンピック出場。
これだけで男子選手の悲運に弱いオリンピックの女神様が
食いつきそうな要素満載。しかしこういった怪我や病気を
乗り越えて、というストーリーはそろそろありきたりで
読者が途中で飽きそうな展開でもある。
私が書き手なら、この伏線を膨らませることはあっても
この結末は選ばないような気がする。ひねくれ者だから。

④ジョニーの「ポップスター・オン・アイス編」
波乱万丈な経歴と男子選手にしては異質なスタイルが
持ち味のジョニーは、キャラクターだけでコメディー映画の
主人公の素質が十分にあります。
これがフィギュアスケートを題材にしたコメディーなら
私は間違いなく彼を主役にするでしょう。
しかし現実では、これは真っ当なスポーツ。
一般の人がイメージする男子フィギュアスケートでは
彼は主役というよりは面白い脇役的に見られがち。
そんな彼が勝つ物語を選んでしまったら、
「これでいいのかよ!」という読者のツッコミが
多方面から飛びそうな気がします。
しかし感想が真っ二つに分かれるものは良作だとも
言われますし、彼が勝つのは物語としても、
フィギュアスケートファンとしてもアリだと思いますね。

⑤ジュベたんの「逆境のクワドジャンパー編」
まず彼というキャラクターの経歴そのものが
物語として十分、笑いと涙に溢れていて素晴らしい。
読者に十分つっこませる言動は、ファンでなくとも
次第に微笑ましくなっていく魅力があります。
一方で競技者としては度重なる怪我、
自分に不利な採点法、それらにどう立ち向かうかという
意外とシリアスな要素も持っています。
これが週刊の少年漫画であれば、見せ場は多いに
越したことはないので、彼が勝つ物語は
最後まで読者を飽きさせずに惹きつけるでしょう。
ただ、色々な要素が詰め込まれすぎていて
終わるころには食傷気味にさせてしまう可能性があります。
オリンピックの女神が詰め込みすぎな物語を選ぶかは
そのときの気分次第のような気がします。

⑥ノブナリンの「スケートで天下統一編」
彼もキャラクターとしては織田信長の子孫という
非常に熱いDNAが埋め込まれています。
逆に言うとこれだけで少年漫画の主役になれそうなくらいです。
しかし本人は殺伐としたタイプではないというのも
今時の漫画っぽく、うまく王道をそれています。
ひとつ難点をあげるとすれば、これまでのイメージが
ストイックな選手としての側面があまりピックアップされてないため
読者が彼に王道の主役としてでなく、面白い脇役としての役割を
求めてしまいがちという点。これは実に惜しい。
確かに経歴や試合での失敗は、コメディとして普通に
一般的には面白い要素ではあるかもしれませんが
その裏に秘められた選手としての才能、地道な努力、
そういったものにスポットライトを本来当てるべきでしょう。
悲劇と喜劇は表裏一体であることを示す新たなヒーローとして
彼の物語は結構美味しいんじゃないかという感じがする。
オリンピックの女神がそれを好むかどうかはわからないけど。

⑦アボットくんの「ブタだって空を飛べる編」
フィギュアスケーターとして能力はあっても
全米のトップ2の影に長いこと隠れがちで
うだつが上がらないタイプの選手だった彼。
そんな彼がどうやって全米トップ2を凌ぐ実力をつけ、
開花していったのか、という物語はドキュメント性のある
ドラマとして非常に面白い展開です。
でも、それだけだと話としては一本筋。
もう少し伏線とか悲劇とか笑いが欲しいので
彼が勝つならば、お気に入りのブタちゃん人形が
突然しゃべりだすとか、空飛んでるとか、
そういう不思議なイベントがあってもいいかなと思います。
(↑突然変なこと言い出してすいません・・・)
ほのぼの系ストーリーとスポ根のまさかのコラボということで
色々新しいことができそうな予感・・・!
ますます地味になっていく衣装にも注目ですね。
オリンピックの女神が新しいもの好きなら彼を選ぶかも。

⑧ステファンの「君のためなら何回でも編」
怪我の悪化による無念の引退から、劇的な回復によるカムバック。
そこに再び怪我の悪夢が押し寄せ・・・という展開は
実に感動ものを好むオリンピックの女神向け。
今の彼の立場からすると、主役として勝つよりは
素晴らしい脇役として永遠に語り継がれるような
ポジションを期待されているような風潮もなくはない。
しかし彼をあえて主役に選ぶのならば、これまで以上の
感動を呼ぶような素晴らしい演技が見られるのだろう。
それだけのために、多少ありがちとかお涙頂戴とか言われようが
彼の物語を選ぶ価値は十分あるはずだ。
私が書き手なら、彼の素晴らしい演技のシーンが
ただ書きたいというだけで悩むと思う。
つまりそうなってしまうと、勝たなくても彼は美味しいという
結論になってしまい、別の人に花を持たせる可能性もなくはないな。
ちなみにタイトルの「君」というのは、もちろん
ステ・ファンの皆様のことですのでご注意ください(笑)

⑨タカヒコヅカの「行け!サラブレッド編」
オリンピック報道が過熱する中で、彼の扱いはわりと小さく
むしろ空気で有名なエヴァンさんよりも空気になってないかと
若干不安になるこの頃ですが、何を隠そう、彼はサラブレッド。
日本代表の他二人があまりにキャラが濃いために
どことなく存在感が薄れようとも、彼の血と能力には変化なし。
上にいける要素があるのに、なかなかいかない、
血筋の良い主役というのは新しい。
そしてこういったタイプが勝つプロットというのは
書き手側としては非常に面白かったりする。
彼が勝てば、良い意味で読者を裏切ることができると思う。
こう、少しずつ彼の能力が明らかになっていって
気づいたら並みいる強豪の上にいた・・!という展開は
書き手として非常に熱いし、スリルがある。
問題があるとすればそれ以前のプロットから
少しずつ頭角を表さなければ、やっつけな印象の物語に
なってしまうこと。それを思うと、全日本なんかは
伏線としてはちょっと惜しかった。
もう少し彼を取り上げてくれるメディアがいればいいのに!
オリンピックの女神さま、力を貸して!(笑)

⑩ベルネルの「眠れるトラ編」
才能はあるけれど、未だ覚醒できずに失敗ばかりという
カンフーコメディーを地で生きているような彼は
「オリンピックのために今まで寝てたんだ!」と
言わんばかりの一発逆転シナリオが良く似合う。
これほど長いスパンで本来の力を発揮できない選手というのは
珍しいので、意外性という意味では彼が勝つ物語は結構面白い。
しかし、勝っちゃうのは物語としてちょっとだけ
反則のような気がする・・・(笑)
いや、「良かったね」と心から言えるのは間違いないんですが
そこにたどり着く前に、もうちょっと良いところを
書き手なら普通は見せるものでしょう。普通は。

⑪コンテスティの「俺、がんばるよ編」
彼の経歴は熱い。長かったフランススケート連盟との確執、
妻の出身であるイタリアへの移籍。試合に出られなかった時代。
試合に出たら頭角を現し、子供も生まれる。
あとはオリンピックだけ・・・! このプロットだけで
映画一本作れそうな気がします。
ここで勝てばホームドラマとしては最高。
スポ根モノとしては感動巨編になりそうなネタだけど
本人のプログラムが微妙に王道とはズレているあたり
「これってコメディー?」と見ている側が疑問を持つ
新しいスポーツホームコメディーが生まれるかもしれない。
個人的に、これはこれでアリですね(笑)
王道のようで王道とズレちゃった感じが。

⑫デニス・テンの「遥かなる野望編」
彼を主役にしたら熱いですね、これまでカザフスタンは
著名な選手が出てこなかった国ですから。
何よりタラソワコーチとマオちゃんが脇役として
出てくるのかと思うと美味しすぎる(笑)
彼の小柄な体格と、ものすごい潜在能力に加えて
天性のエンターティナーの素質は、ファンでなくても
この先が楽しみになってしまう。
しかし年齢的に、どっちかっていうとソチじゃない?
という気持ちがなくもない。
書き手としても彼を勝たせるのであれば
他のベテランに、どう折り合いのつく物語を書くかを
延々と悩まなければならないと思う・・・ので
バンクーバーでは彼のシナリオは保留にされそうな気が。

⑬ライサチェックの「悩める世界王者編」
「オリンピックプレシーズンの世界王者は
オリンピックチャンピオンになれない」という、
何とも嫌なジンクスを背負った我らがライサチェック。
しかし、それを特に気にせず多忙な中練習に集中し、
試合ではグランプリファイナルで優勝、
オフアイスでは変な衣装を作って何度も変えてみるなど
それなりに存在感を見せた今シーズン。
圧倒的な強さを持たない世界王者が、嫌なジンクスと注目を抱えて
どうやってオリンピックチャンピオンになるかというプロットは
これまでにない展開かもしれない。でも話としては地味。
世界王者だけど、そうであることが却って逆境になっていて
加えて大技も怪我で仕上げるのが遅れている上、
ライバル達がだんだん調子を合わせてきたとなると
彼を取り巻く状況は(実は)結構厳しい。
でも本人は妙に落ち着いていて自信たっぷりで
twitterで近況をつぶやき始めたりなど迷走中。
ともあれ、「世界王者がどう戦うか」という物語自体は
そこそこ熱いとは思う。だけど彼が勝つなら、
オリンピックの女神は20年以上もかけて
この物語の伏線をはっていたことになるわけで(笑)
それはそれで面白いっちゃあ面白いか・・・?


というわけで13人を例に出してみました。
誰のドラマであってもとても興味深く、感動的ですが、
オリンピックの女神が選ぶのは果たしてどれなのかを
こうやって考えるのも面白いものですね!

4 件のコメント:

マイキー さんのコメント...

「仮に私がフィギュアスケートの女神だったら、誰の勝利を選ぶか」という視点がとても新鮮で、興味深く読ませて頂きました。
どの選手の物語も、たいへん魅力的なので、当日、女神が誰を選ぶかは、そのときの彼女の気分次第という気がします。…ドキドキしますね!

Askarose さんのコメント...

マイキーさま:

出場選手それぞれに物語があるとなると誰が勝つ物語も成立するわけで、スケートファンとしてはそれをピックアップしておきたいという気持ちがありました。特定の選手のファンだからといって、その選手の物語だけを追っていたら勿体無いですしね。

ちなみに妹はアボットくんの「ブタだって空を飛べる編」とステファンの「君のためなら何回でも編」が妙に気に入ってるようです(笑)。ステファンについては『君のためなら3Aでも』ってタイトルでもいいんじゃない?とか言ってましたが(笑)

まあ、男子シングルについてはオリンピックの女神は最有力な人をポロっと優勝させてしまう傾向にありますので、今年これだけ最有力と言える選手が揃っている中で誰を選ぶのかはとても興味深いですよね~。やはり楽しみです。

マイキー さんのコメント...

わたしが読み手だったら、ご贔屓やスケートの好みなどは抜きに、一読者として純粋に誰の話を一番読みたいか考えてみました。どの物語も非常に読み応えがありそうなので、散々迷ったのですが、ぜったい一つだけ選べと言われたら、わたしの答えは、織田くんかなと思います。
彼が少年マンガの主人公みたい、というのは、青嶋さんも『最強男子』(五輪代表男子3名の特集本)の中で書いていて、確かに言われてみると、そうなんですよね。血筋の知名度の高さといい、愛されキャラなところといい、めっちゃ主人公っぽい。
単身カナダに渡って、大成長を遂げ、世界ジュニア優勝!とか、シニアデビューのシーズンにいきなりNHK杯優勝!とか、全日本で素晴らしい演技をしたものの、一歩及ばずトリノに行けなかったこととか、それでもワールドでは4位入賞!とか、すごーくドラマティック!!だし、その後も涙あり笑いあり、「事実は小説より奇なり」を地でいってますよね。今までの五輪チャンプにはいなかったタイプだし、バンクーバーで彼が優勝してくれたら痛快だろうなー。
『織田信成物語』、ドキュメンタリーかマンガで誰か取り上げてくれないですかねー。ぜったい面白いと思うんですよー。

Askarose さんのコメント...

マイキーさま:

ノブナリンの物語はまさに少年漫画の王道すぎてひれ伏したくなりますね。彼、わりと男性に人気があるようで、男友達も「ノブナリ面白れー!」とか言ってたり、うちのパーソナリティもよく彼のことを話題にします(もちろん良い意味で!)。

彼はまだ若いけれど、世界に出てきたのが早かったこともあって往年のベテランスケーターに比肩するような存在感が(私の中に)あります。こうしてみると、彼の活躍すごいですよねえ。ジュニアで一度世界王者になっているし。今回がオリンピック初挑戦だというのが今となっては信じられないくらいに。カナダでのジェフ君とのエピソードも可愛いし(笑)、怒涛のカナダ編と、やっぱり怒涛の(笑)アメリカ編に話もうまいこと区切れそうだなと。脇役としてモロゾフコーチとミキちゃんが出てくるのも美味しいですよね。

金メダリストになったら誰でも漫画になる風潮がありますが、彼がそうなったらすごく面白いコミックになりそうです。というか、どうして誰も漫画化しないの!?と思っちゃいますねー。まだフィギュアスケートが女の子のスポーツという印象が一般的に強いからかもしれませんが・・・。仮にメダリストになったらこぞって漫画の依頼が来そうな気もするんですけどね!

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