2010年2月27日土曜日

ざっくりまとめて女子シングル感想

「悲劇とは、もっとも望んでした事が
もっとも望まない結果を引き起こす事」 - 木下順ニ



・・・「ローズさん、いきなりどうしちゃったの?」と
心配されそうな出だしで始まりましたが、上記の言葉を
引用した理由は後述するとして、バンクーバーオリンピックの
女子シングル感想を、超ざっくばらんに。


4年前と比べてレベルがものすごく上がった、これが第一印象。
表彰台3人以下の子達も皆才能があり、得点源になる技や
印象に残る表現力もあり、しかもそれらを大舞台で
出し切った選手が本当に多かった。素晴らしい試合だった。
このところ「女子シングルは出場する選手の一覧を見るだけで
誰が勝つか大体わかるからつまらん」などと言ってましたが
今回のオリンピックの女子シングルを見て
私のこのところ冷め始めていた、この競技が好きという気持ちが
再燃したように思いましたね・・・。
女子シングルっていいなって、改めて思った。
いや、力を全然出せなかった選手もいたんですがね、
特にカロちゃんとかカロちゃんとか、カロちゃんとかね(涙)

4年前、いやそれ以上前から知ってる選手が殆どの中、
彼女達の成長を最も感じた試合でした。
みんな上手くなったし、魅せるようになった。
長い時間をかけて、オリンピックに焦点を合わせて
きちんと実力をつけて・・・。
良い演技がたくさん見られて「オリンピック」っていいなと
すごく思いましたね。テレビで見ているだけで幸せだったけど
会場のお客さんはもっと幸せだったろうねと、
昨日妹と話していました。
名前を挙げたらキリがないし、私が細かく言うまでも無いけど
メダリスト以外では未来ちゃん、美姫ちゃん、ラウラ、こるぴん、
レイチェル、レオノワちゃん、マカロワちゃん、あっこちゃん、
彼女達の良い演技に本当に救われました!
思うように力を出せなかった他の選手達も
姿を見られただけで幾分ハッピーでした。
本当に彼女達の健闘を称えたいです。良い試合をありがとう。

そして、メダリスト達が彼女達以上に素晴らしかった。
ロシェットにはエヴァンさんもぐっときたようですし(本人のtwitterより)
私も会社だったけど涙出そうだった。
ユナちゃんはオリンピックに最高のコンディションで
最高のパフォーマンスを持ってきてくれた。何たる精神力!
この採点システムでどうジャンプを跳べば、あるいはどういうプログラムで
どういうつなぎの工夫をすれば点が取れるのか、
今後彼女は良い見本になっていくのだと思う。
フリー終了後に涙を見せるのもぐっときましたね。
真央ちゃんはトリプルアクセル3回成功&3回認定という
女子シングル未踏の領域に到達して、言葉が出ないくらい。
その代償として失った他のジャンプや技のキレを思うと悲しいけど
女子選手の運動能力の可能性において、やはり歴史を残した。
他でミスが出たこと、結果が1位でなかったことは悲しいと思うけど
彼女はもっと自分のやったことや、能力に誇りを持っていいし
他の選手達からの追撃をかわしての銀メダルは十分賞賛に値する。
日本側としてもメダルが獲れて万々歳・・・でもない・・・?


そう、日本中は悲しみに暮れているではないですか。
あんなに素晴らしい試合だったというのに。


そして女子シングル後の報道を見てなるほどと思った。
「涙の銀メダル」、この言葉が全てを物語っていた。
日本中で愛されている彼女の夢が叶わなかったのだから
そう報道されても仕方が無いとはわかっているけれど
あの試合では銀メダルだって相当な名誉に値すると思うぞ、と。
そんなふうに悲劇として扱わなくてもなあって。
悲しむことなど何もない、銀メダルが彼女の選手としての能力や
努力の結実を台無しにするものでは全く無い、
ただ、それは彼女自身が欲しいものではなかった。
彼女が望んだ結末ではなかった。
そのドラマに日本中が健闘を称え、彼女と共に悲しんでいる。


・・・で、冒頭の文章に思い至ったわけですよ。


彼女が誰よりも才能があって、誰よりも努力できる選手だということは
彼女のファンでなくとも、もはや知れ渡っていること。
その彼女の夢が叶わない、その結末に至ったプロセスや背景について
彼女と共に悲しんでいる人たちの胸に去来するものは何だろうか・・・?


以下、私の言葉では彼女のファンにとって
何の慰めにもならないかもしれないけど・・・


彼女にはこの四年間において、あらゆる戦い方の
可能性の選択肢があったと思う。
恐らく他の選手の誰よりも、選択肢の数には恵まれていたはず。
彼女が望めば、彼女の手元にない選択肢であっても
彼女の能力と努力をもってすれば、増やす事だって出来たはずだろう。
この試合を笑顔で終わる戦術はたくさんあったはずなんだ。


「スポーツが高度な技術よりも戦術を必要とするなら、
もはやスポーツではない」という馬鹿げた意見をどこかで見たことがある。
逆に私は聞きたい、戦術を全く必要としないスポーツが
オリンピックの競技にどれだけあるだろうか、と。
どの競技にもルールがあり、それで勝つための戦術があり、
選手達や彼らのチーム全体が考えて、個人の能力をどうプラスに生かして
勝てるシナリオを描いていくか必死で考えて、努力している。

だけど彼女と彼女のチームが描いたシナリオは
残念だけど勝つためにはあまりに弱弱しく見えた。
「スケート界の高難度の技を軽視の巨大な流れに
世界一の才能と努力を持つ女の子が必死で立ち向かっていく」
こういうシナリオは物語としては悲壮感たっぷりで
共感が得られやすく、人々の関心を惹きつけ、
それがハッピーエンドに終われば巨大なサクセスストーリーとして、
叶わなければ壮大な悲劇として、堂々たる結末となる。
だけど叶わなかったときに、一番悲しいのは
その先頭に立たされている彼女自身だということを目前にして、
私はこのシナリオを戦略とした彼女のチームを非難したい。
悲劇のヒロインに本人がなりたいならそれでも良かったでしょう、
でも昨日の彼女を見ていたら、そうだとは絶対に思えない。
「彼女をどうしたら笑顔で終わらせてあげられるか」、
彼女の周りで、それを真に考えてあげられる人はいなかったのだろうか。
「本人がやりたいようにやらせるのが一番いい」というのは
その結果が伴わなかったときに、周囲の人たちの言い訳にしかならない。


この「悲劇」のシナリオから、彼女自身が何を学ぶか、
ここからの4年間はそれにかかっていると思います。


彼女がやりたい技をやって、それでいて勝てるルートが
今までの4年間の中に必ずあったはず。
そして今度は、今回と同じ道を辿らないように
彼女のチームがよく学ばなければならないでしょう。


この記事を読んで気分を悪くされた方がいたらごめんなさい。
だけど私は、心から彼女を応援しています。
あんなにも才能があって、努力もできて、
誰からも愛されるし、支援の環境も整っているのに、
それでも勝てる選択肢を選べなかった、彼女の不器用さと運命に
心を痛めている一人であるということを理解していただければと思います。

6 件のコメント:

azure_note さんのコメント...

真央選手始め、オリンピック選手達には、本当に感動しました。と同時にやっぱり「人生は思い通りに行く方がちょびっと」なのだと心が一時停止しちゃったりしました。採点競技はその点数の妥当性が全会一致することはないのでしょうね。こっちをたてればあっちがたたず、まるで恋愛のようです(笑)。

今回の女子シングルの結果が出てから、多くのフィギュアファンの方達と同様に、昨日から沢山の文章を(自分を落ち着けるために)読んでいます。うんうんとうなずくもの、シュプレヒコールをあげたくなるようなもの、前向きになれるようなもの、色々ありました。が、ローズさんの書かれた下記の内容が一番涙が出てしまいました。ど・ストライクだったのでしょうね、さすがです。

>だけど叶わなかったときに、一番悲しいのは
その先頭に立たされている彼女自身だということ
>あんなにも才能があって、努力もできて、
誰からも愛されるし、支援の環境も整っているのに、
それでも勝てる選択肢を選べなかった、彼女の不器用さと運命に心を痛めている一人

個人的には真央選手には全米選手権のアボット選手のような演技をコンスタントにできる選手になってほしいです。そしてなれるんじゃあんめーか、とぞくぞくしています。あ、4回転を飛ぶ、ってことじゃないですよ。

そして遅くなってしまいましたが、ライサチェック選手、オリンピックチャンピオン、おめでとうございます!才能と努力と戦略、すべてが揃っていても自分の思い通りの結果を手に入れられる人は一握り。その1人になることができたライサチェック選手に拍手を送りたいです。ローズさんも涙されたんでしょうね。お疲れ様でした。

長くなってしまい、申し訳ありませんでした。

マイキー さんのコメント...

バンクーバーのユナちゃんを見ていて、彼女は万全の準備を整えて、ここに来ることができたんだなぁと思いました。そして、フリー演技終了後、悲嘆にくれている真央ちゃんを見て、「彼女もそうできていたら良かったのに」と、心から思いました。真央ちゃんは、この4年間ずっと、ものすごく頑張ってきたけれど、バンクーバーに向けて、万全の準備を整えることができなかった。そのことがとても残念です。

>だけど彼女と彼女のチームが描いたシナリオは
>残念だけど勝つためにはあまりに弱弱しく見えた。

そうなんですよね…。昨季あたりから、真央ちゃんの戦い方を見ていて、素人目にも、「それでいいのかな?今のルールを考えると、不利なんじゃないかな?」と感じることが多くなってきました。真央チームの内情は知らないし、誰が舵取りをやっているかも分かりませんが、もっと何とかできなかったのかと、本当にもどかしく思います。

でも、真央ちゃんにとって、今回の経験は、ソチまでの4年間に、ぜったい生きるはず。これから彼女がどんなスケーターに進化していくのか、ずっと見守っていきたいです。

animato_0703 さんのコメント...

はじめまして、ローズさん。

こちらのブログを知ったのは、ちょうど「ジェフリー・バトル選手現役引退」が大きなニュースになっていたころです。
「ライサイドより愛をこめて。」も含めて、選手やフィギュアという競技に対する愛あふれる記事をいつも楽しませていただいております。

オリンピックのフィギュアの試合、どの競技も素晴らしかったですよね!
遅くなりましたが、ライサチェック選手、金メダルおめでとうございます。
五輪の舞台でのあのパフォーマンス、王者と呼ぶに値する、本当に素晴らしいパフォーマンスだったと思います。

私はあまりブログにコメントを残すことはないのですが、

>叶わなかったときに、一番悲しいのは
>その先頭に立たされている彼女自身だ
>「彼女をどうしたら笑顔で終わらせてあげられるか」、
>彼女の周りで、それを真に考えてあげられる人はいなかったのだろうか。

この文に、深く共感したので、それをお伝えしたくてコメントした次第です。
本当にそうですよね。一番悲しくて悔しい思いをしたのは彼女ですよね。
彼女の競技後インタビューで、特別彼女のファンではない私でももらい泣きしてしまい、
その後この文章でまたうるっときてしまいました。
なんだか、私が彼女の陣営に関してもやもやと考えていたこととどんぴしゃでした。
あと、ローズさんは本当にフィギュアが好きなんだなぁ、と改めて感じました。

フィギュアのファンである私たちは、基本的に見守ることしかできないのですが、こういうふうに彼女のことを考えている人がいる、そういう事実だけでも彼女自身に伝えたい、と思ってしまいました。
彼女だけでなく、すべての選手(五輪に出られなかった選手も含めて)がこれから幸せな人生を送ってほしい、そういうふうに強く思った五輪でした。

長くなってしまってすみません。
ローズさん転職なさるようですが、お体に気をつけてお過ごしくださいね。

Askarose さんのコメント...

azure_noteさん:

4年に一度しかないオリンピックという期間に、これだけ人の心を揺さぶる出来事が起こるものなのかとしみじみ思っています。思い通りにならない方が大多数だけれど、それを見て私達が何を学ぶかも大切なのだなといった感じです。まして採点競技ですと、結果に「どうして?」がつかないことの方が少ないですよね。しかも採点そのものは女心かっていうくらい、毎年コロコロ変わりましたしね(苦笑)

私は自分の意見をあまり変えたくないので、他の人のブログなど今回はまだ殆ど見ていないのですが、皆さんそうやってあちこち巡ってらっしゃるようで、この辺鄙なブログでさえもアクセスが以前の何倍にもなっています。数ある秀逸なブログの中から、ここの記述をピックアップしていただいてありがとうございます。自分では特に誰かの共感を得たいとか、主張したいという気持ちもなく、単に自分のやりきれなさが何故なのかを考えて、このような文章になりました。

真央選手、彼女には進化を続けていく決意があるようですので、今後どういうふうに成長していくのかを見守る楽しみができたと思って、声無き応援を続けたいです。

それからライサチェックの優勝に関しても祝福ありがとうございました!当日、それに関して自分がどういう気持ちになったかを全く書かずにいたので、なんだか肝心なところが抜け落ちているブログになっていますが(笑)、そうですね、ここ数年で一番感極まるものがありました。

コメントありがとうございました!

Askarose さんのコメント...

マイキーさま:

真央ちゃんが新しいコーチを探す、タラソワ先生は関わるけど総合的に、という報道を見て「ああ今更・・・」とちょっと嘆いてしまいました。オリンピックシーズンに、司令塔となる人が側にいない、どうしてそんな厳しすぎる(というか無謀すぎる)やり方を彼女の陣営が選んだのか・・・。きっと日本中が疑問に思っていたとは思うのですがね。しかし4年後に向けては本当に良い教訓になったはずですし、今度は同じ道は辿らないのだと信じています。

一方でユナちゃんは引退報道が出ていますね~。ここ5年間くらいできっちり計画通りにやってきていましたし、目的は達成したでしょうし、まあ仕方が無いかな?と思います。だけど真央ちゃんが、これからの4年間でトリノに至るまでのプルさんみたいな、「自分に敵うライバルがいなくて一人ぼっち」の孤独な戦いになるのかと思うと、少し寂しくもありますね。まあ、彼女の人生ですしね・・・!

Askarose さんのコメント...

animato_0703さま:

お初にお目にかかります!&このブログ発足当初からご愛読いただいて恐縮です!向こうのブログもお世話になっているようで光栄です~、いやはや、どちらもしょうもないブログ&管理人で頭が下がります(苦笑)

今回のオリンピックのフィギュアスケートに関しては、どれも「4年前と比べてレベルが上がったな~」とすごく感じました(採点の変更の影響で高難度ジャンプについては実施された回数や成功させた選手はかなり減ったのでしょうが、スケーティング技術は格段に違いますよね、シングルスケーターなのにアイスダンサーになれそうなエッジの使い方をする選手が増えました)。
ライサチェックへの祝福、ありがとうございます!コケない&崩れないことに定評がある選手なだけに、大コケする心配はあまりなかったですが、今シーズンで一番良い状態&良い演技を持ってこれて・・・それだけでほっとしましたし、その段階で順位がどうあれ満足だと思いました。

この記事の記述に共感していただいて、且つそれをわざわざお伝えいただいてありがとうございます。私もanimatoさまと同じように、彼女の特別なファンではないのですが、あの泣き顔を見て「どうしてこんな彼女を見なければならなかったのか?」って、その日すごくショックだったのです。仮に同じ結果でも、まだ笑ってくれていればこんなことは書かずに済んだでしょうね・・・

ご指摘のように、私はこの競技が好きですし、時代や流れは変わっても、氷上にいる選手達を見られるのは素敵なことだと思っています。だけど、このときの彼女のような悲しい物語はできればもう見たくない・・・そんなふうに強く思いました。もちろん、オリンピックという場に到達できなかった選手のこともずっと記憶に留めておきたい、と。

コメントどうもありがとうございました!
&私の転職についてもご心配かけてしまってスミマセン、まず会社を無事に辞められるかが先なのですが、良い人生の区切りだと思って前向きにやっていきたいです。ではでは。

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