2010年6月11日金曜日

ベルビン&アゴスト、競技引退

今日はスケートの話題を。

表題通り、長らくアメリカのアイスダンス代表だった
タニス・ベルビン&ベンジャミン・アゴストの
競技引退が発表されました
元記事


以前から「私たちはバンクーバーまで」という発言をしていたので
ある程度の覚悟はありましたが・・・・いざ発表されると寂しい。
二人は今後はプロとしてスケートを続けるとのことです。


前から書いていますが、私はアイスダンサーの中では
とりわけこのチームがお気に入り。特にベンが大好き(笑)。
私の好みはともかく、アイスダンスは恐らくフィギュアスケートの中で
最もファンの嗜好が分かれる競技だと思う。
日本ではまだ国際試合で上位入賞を狙えるようなチームがいないし
CSくらいでしか試合が放送されないこともあって
一般的な認知度は非常に低い。
以前、仕事でスケートの話をするために自社放送に出たときに
パーソナリティに「ペアとアイスダンスはどう違うの?」と
聞かれたことがあるくらいだ。興味ない人にはペアと区別がつかないらしい。
それでも日本でスケート人気が高まり、ここ4年でアイスダンスのファンが
かなり増えたように思うし、私もその一人。
シングルと違って大きなミスは滅多に出ないし、あってもわかりづらいし、
色々なダンスのエッセンスを取り入れているから見ていて一番楽しめる。
衣装も多様で、洒落ているものが多いのも嬉しい。
そして何より、上位のチームは個性が光る。

ベルビン&アゴストはその中でも「踊ること」に長けているチーム。
『アイスダンス』という名前の通り、
この種目は元は社交ダンスから派生しているのだから
選手達は皆踊れてなんぼ・・・と思うのだけれど
近年は新採点システムの影響によって
スケーティングと高度なリフトなどの技術的な面が重視され
トップチームであってもよりダンス的な表現が減っているのが現状。
一応、『コンパルソリーダンス』、『オリジナルダンス』では
年代や種類を特定したダンスの曲を使うという課題が与えられているけれど
技の回数などは決められているので、あくまでダンスの曲を使って
技と技との合間にそれらしい振り付けをするという感じで
きちんと「踊っている」チームは少ないと思う。
(ちなみに今年からオリジナルダンスが廃止になり
代わりにショートダンスというものが導入されるらしい)
実際のところ、いくら上手に氷上で踊っても
シングルと同じで技術点が伸びないことには演技点も上がらないので
競技である以上、それは仕方の無いことなのだろう。
その結果、まるでペアスケートのような曲芸的な技を駆使しなければ
オリンピックで上位にいけない時代になっているのだとしても。。。

個人的なアイスダンスの好みをいうと、
ベルビン&アゴストのようなダンスに長けたチームか、
ドムニナ&シャバリンのような古き良き王道路線のチームが好き。
ペシャラ&ブルザやケア姉弟のような小芝居路線も悪くないけど(笑)
ダンスに関してはどちらかというと品のあるプログラムの方が好きだ。
今年のオリンピックの金メダリストであるヴァーチュー&モイアは
総合的なモダンアートを体現しているようなチームで
非常に洗練されていて素敵なのだけど、あまりダンスという感じはしない。
銀メダリストのデイヴィス&ホワイトは、前にも書いたけど
ダンスというよりは曲芸を見ているような感じで
生で見たときに映像ではわからない、「面白いけど品に欠ける」という
印象がどうしても拭えなかった。あと、この二人はEXが面白くない(笑)。
普通、アイスダンサーならEXは試合より印象的なプログラムを
作っているものなんですが・・・この二人はそうでもない(苦笑)。
・・・とまあ、そういう気持ちがあるから今年の全米選手権で
彼らがベルビン&アゴストを上回ったときはちょっと悲しかった。

ベルビン&アゴストの良さを改めて振り返ると
彼らの近年のプログラムはオリジナルダンスが優れていたと思う。
フリーはダンス路線では上に行けないと感じていたのか、
あらゆる方向を試していたものの・・・
ここ4年間でいわゆる『ハマりプロ』を作れていなかった。
どれも悪くはないし、むしろ洗練されていて素敵だったけど
試合の中で一番印象的なフリーは、いつも他のチームだった。
ベンのスケーティング技術に比べるとタニスは劣るとか、
印象的な高難度の技を持っていないとか言われ、
少し行き詰っていた時期もあった。
それでも彼らが本来持っている音楽性と品格は
良いときも悪いときも、最後のオリンピックまで輝き続けていた。

うまく言えないけど、二人を見ていると氷上で踊ることが
こんなに楽しいのかって思う。
ただ振り付けをこなすのと、踊るのとはこうも違うのかと
改めて考えさせられるのだ。
ダンスのテーマに合わせた雰囲気作りも素晴らしく、
踊りだけでなく衣装や表情にも抜かりがない。
曲の雰囲気から絶対に逸脱しないから見ていて安心する。
いつも音楽の良いところで、ハッとするような技や動きをしてくれる。
そして最終的にどちらを見ていても素晴らしい。これは重要。
ダンスにおいては女性側が引き立つことが大切だけれど
男性側がおろそかであっては魅力が半減してしまう。
ベンジャミンはいつ見ても抜かりがなく、素敵だ。
タニスがあまりに美人なので、つい目を奪われてしまうけど
ふとベンに目がいったときにいつも感心する。
彼には女性をリードしながら自分自身を魅せることができる
社交ダンサーの特質が十分備わっている。
小芝居も上手で、ロックスターから伊達男まで何でもやる。
とにかく黙っていても華やかなタニスのパートナーとしては
うってつけの人材なのだと思う。
以前、某アイスショーで怪我で出場できなかったベンの代わりに(笑)
エヴァンさんがタニスと組んだことがあったけれど
そのときのエヴァンさんの情けなさといったらもう・・・(苦笑)。
今、エヴァンさんはダンスの経験を積んで
少しはリードできるようになったかもしれないけれど
それでもベンジャミンの代わりにはならないでしょうね。
ベンに比べて、エヴァンさんは不器用すぎる。
逆に言うと、いかにしてベンの表現の幅が広いかってことなんですが。


グダグダと二人について語ってしまいましたが
せっかくなので二人のオリジナルダンスの動画でも貼り付けて
この記事を締めくくろうと思います。


まずは2006年トリノオリンピック。
初めて見たとき、「すごい美人がすごい衣装で踊ってる!」と
軽くショックを受けたものです(笑)




次に2007年東京ワールド。
ピアソラメドレーです。




こちらは2009年ロサンゼルスワールド。
冒頭のベンのタップダンスが素敵すぎる。




そして2009年中国大会。映像が綺麗なので採用(笑)。
モルドバの可愛らしいダンス。




本当は07-08のオリジナルダンスも貼り付けたかったけど
画質が荒いのしか見つけられなかったので割愛します。
でも楽しくて面白いプログラムなのでオススメです。


長くなってしまったけれど、いつも素敵なダンスを
氷上で見せてくれた二人にとても感謝しています!
プロになっても来日して素晴らしいダンスを披露してくれますように!

4 件のコメント:

Lilla さんのコメント...

子供の頃、オリンピックだかNHK杯でアイスダンスを見た感想は「濃い・・・」
シングルに比べ、トップ選手の年齢が10歳ぐらい違う、表現方法等の理由だと思いますが(笑)。
だからベルアゴの引退は「若いのになー」に尽きます。もっとも若くしてトップに行ってしまったこともあると思うけど・・。そしてやはり若いカップルに競技成績で抜かれてしまったことも大きいのかなあと。仏のペシャブルはまだ上に一組いるから、モチベ不足になりにくいだろうし、環境が違えばこんなに早くやめなかっただろうな、と思わずにいられません。
ただフィギュア界の引退は一部例外を除き即「見られない」につながらないので、ショーでの活躍が楽しみです^^。

kashiramo さんのコメント...

正直なところ、2009-2010シーズンで初めてアイスダンスをまともに見るようになったのですが、一番印象に残ってるのがベルビン&アゴストのEXでした(・・・日本だと、アイスダンスはEXでしか観られない場合も多いですよね;)。あの手紙が小道具で出てくるやつです。すごくわかりやすい設定ではありましたけど、見事にはまってしまい、涙でました;あれは、何度観ても(実際少なくとも10回は観たはず)すぅっとその世界に引き込まれるプログラムでした。

引退は非常に残念ですが、プロの世界でさらに磨きがかかるのかなぁ。それに期待しています。

Askarose さんのコメント...

Lillaさま:

一昔前、それも旧採点時代の頃のアイスダンスって濃かったですよね(笑)。当時はオリンピックくらいでしか見る機会はなかったですが、あの頃と比べるとトップチームの平均年齢がものすごく下がったことに今更ですが驚いています。2006年トリノのときもベルビン&アゴストは「すごく若いチームが表彰台に!下剋上!!」っていう空気でしたものね。まさかバンクーバーの金メダリストが彼らより若いチームになろうとは思ってなかったです。

二人はアメリカでは長い間トップに君臨していたし、後輩達にも国際試合で追いつかれてしまったし、元々バンクーバーまでという意思があったから今回の決断は難しいものではなかったかもしれないですね。時期的にも一番良いタイミングと判断したのでしょう。・・・それにしたって、まだ若いし、まだ戦えることに変わりないのでちょっと悔しいですね~。と同時に北米のダンスカップルは若くしてトップに立つから(選手としては)短命、という印象になってしまいました。ヴァーチュー&モイアとディヴィス&ホワイトも二十代で競技を終えてしまうでしょうしね。。。

しかしおっしゃる通り、フィギュアの有名選手は引退してもショーでの活躍が増えますし、特に北米ではプロの活躍も多いですから今後の活動に期待ですね!(でもプロとしての活動も「2年くらい」とか以前言ってましたが・・・)早いうちにまた来日してくれたらいいなと思います!

Askarose さんのコメント...

kashiramoさま:

昨シーズン、テレビで放送されたダンスのプログラムって二人のEXを除けば地上波では殆どなかったですよね~。中でも印象的だったと思います。私も昨年試合のEXやショーで何度か生観戦しましたがやはり感動的でした。よくある設定なんですけどセリフがないのにストーリーや心情が伝わってくるって素敵ですよね。最近はこういうEXを作る選手も減っているだけに存在感が光りました。

今後はプロの世界でもっと素敵なものを見せてくれるのだと信じています!なるべく長く見続けたい二人ですよね~!

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